ベランダでできるキッチンガーデン

小松菜(アブラナ科アブラナ属)

土壌医 藤巻久志/JA広報通信より


 「漬け菜」とは一般には漬物に使用する菜っ葉ですが、農学では非結球のアブラナ属の葉菜のことをいいます。野沢菜やチンゲンサイなどがあり、結球するハクサイやキャベツは含みません。
 江戸幕府第8代将軍徳川吉宗が命名したといわれる小松菜は、関東地方で栽培されてきたツケナの一つです。1970年代に世界初の小松菜の交配種「みすぎ」が育成されると、新しい産地が次々にでき、全国の野菜売り場に並ぶようになりました。
 交配種は雑種強勢と両親のいいところ取りによって、生育が旺盛で収量が上がり、病気に強く味も良くなります。現在のツケナの大半は交配種です。日本の野菜の育種は世界のトップクラスです。
 交配種はそろいが良いので、規格通りに出荷する生産者にとっても、同じ価格で販売する流通業者にとっても、大きなメリットがあります。一斉に収穫はしない家庭菜園では、収穫期に幅がある「固定種」の方が良いかもしれません。
 小松菜は暑さや寒さに強く、ほぼ周年栽培ができます。深さ10cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、5cm間隔に筋まきします。小松菜は種が細かく多くまきがちですが、発芽が良いので厚まきすると間引きに手がかかります。薄く覆土をして軽く鎮圧します。発芽まで乾燥させないようにします。
 発芽後、順次間引きして、本葉4~5枚のときに株間を約5cmにします。水やりは朝方にし、夕方に土の表面が乾く程度にします。追肥は1週間に1度、1000倍の液肥を施します。本葉4~5枚になった物から収穫し、本葉7~8枚までに終えるようにします。
 水菜、広島菜、芭蕉菜など、小松菜以外のツケナも栽培方法は似ています。子どもの頃のお雑煮やみそ汁に入っていた菜っ葉を思い出して、種まきするのも良いでしょう。


イチゴ(バラ科オランダイチゴ属)

土壌医 藤巻久志/JA広報通信より


 果物屋でも八百屋でも売られているメロンやイチゴは、果物、それとも野菜でしょうか。
 植物的分類では、野菜は毎年種をまいたり苗を植えたりして収穫する一年生の草本作物で、果物は樹木に結実する実を何年にもわたり収穫する永年性の木本作物です。
 ウリ科のメロンは種から育てて、1年以内に収穫を終える草本作物なので、植物的分類では野菜です。イチゴはバラ科で、バラ科は永年作物ですから果物になります。
 農林水産省の統計ではメロンやイチゴは野菜として集計されますが、同省が認可監督する中央卸売市場では果物として扱われます。メロンやイチゴは「果物的野菜」に分類するのが良いのかもしれません。
 イチゴはベランダでも簡単に栽培できます。10月になるとキッチンガーデン向きの品種の苗がホームセンターなどの店頭に並びます。ポット苗に付いているラベルの写真と説明を見て、好みの苗を購入します。
 深さ15cm以上のプランターをベランダの日当たりの良い所に置き、市販の培養土を入れます。株間15~20cmに、クラウン(根茎部分)の根元が見えるくらいに浅植えします。土が乾いたら冬でも水やりをします。
 活着する11月上~中旬と、葉茎が本格的に伸びてくる2月下旬~3月上旬に1000倍の液肥を1週間置きに施します。黄色く枯れた葉や赤くなった葉は、葉の付け根から丁寧にかき取ります。
 品種やその年の気候によっても多少違いますが、5~6月に収穫できます。赤くなった物から収穫します。果実には手を触れずに、果梗(かこう)のところを爪で摘み取ります。
 収穫が終わると、親株からランナーが伸びて子株ができます。この子株を育てて苗を作ります。これを毎年繰り返します。
 数年後にイチゴを収穫しながら「このイチゴは〇〇ちゃんが生まれた年から栽培しているのだよ」という会話ができるかもしれません。


ケール(アブラナ科アブラナ属)

土壌医 藤巻久志/JA広報通信より


 今では毎日のように目にする青汁のテレビコマーシャルは1990年ころから始まりました。それまで青汁は首都圏では東京・銀座や横浜・桜木町などの数少ないお店でしか飲むことができませんでした。
 健康食品として飲用される青汁の原料はケールです。ケールは欧州で紀元前から栽培されていました。ケールから花蕾(からい)を食べるブロッコリーやカリフラワー、茎を食べるコールラビ、脇芽を食べる芽キャベツなどが分化しました。耐暑性や耐寒性があり、とても強健な葉物野菜です。カロテンやビタミンCを多く含みます。長期間収穫できるので家庭菜園に適しています。日当たりの良いベランダなら簡単に栽培できます。春から秋まで随時種まきできます。
 深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れます。株間20~25cmで、1カ所に4~5粒の点まきをします。発芽して双葉が開いたら、子葉の形が悪い物などを順次間引きして1本立てにします。追肥は1週間置きに1000倍の液肥を施します。朝方に水やりし、夕方に土の表面が乾く程度にします。
 和名が「緑葉甘藍(かんらん)」や「羽衣甘藍」というように、キャベツの仲間ですから、アオムシやヨトウムシなどの害虫が付くことがあります。生葉を利用するので、農薬は使用したくありません。毎日、葉の裏まで観察し、見つけ次第割り箸などでつまみ捕殺します。秋まき栽培は害虫の発生は少ないです。
 葉が10枚以上になったら、下の葉から順に摘み取り利用します。新鮮な葉をジューサーにかけて青汁にします。蜂蜜を入れて飲めば「まずいっ!」ということはありません。サラダや炒め物の具にすることもできます。
 葉が大きく形も面白いので、観葉植物としても楽しめます。緑を見ていると心が落ち着きます。ケールを育てて、心と体の健康を増進させてください。


ビート(ヒユ科フダンソウ属)

土壌医 藤巻久志/JA広報通信より


 ビートやホウレンソウはアカザ科に分類されてきましたが、DNAが決める新分類ではヒユ科になりました。
 世界三大河川や世界三大通貨などといいますが、世界三大スープはボルシチ、フカヒレスープ、トムヤムクン、ブイヤベースの四つの中から三つに絞れないようです。
 ロシア料理のボルシチは、ビートやタマネギなどの野菜と牛肉を炒めてからじっくり煮込んだスープです。日本ではビートの青果が入手しにくいため、家庭の食卓に上ることは少ないです。
 ビートがスーパーに並んでいなければ、自分で作りましょう。ビートの種はホームセンターや通信販売などで入手できます。栽培も簡単でベランダでもできます。ビートは冷涼な気候を好み、夏と冬は品質が悪くなるので、春と秋に種まきします。
 深さ15cm以上のプランターを日当たりの良い場所に置き、市販の培養土を入れます。種皮が堅いので、一昼夜水に浸すと発芽が良くなります。株間15cmで、1カ所に3~4粒の点まきをします。種の2~3倍の覆土をし、軽く鎮圧します。
 ビートは多胚種子といって1粒の種から複数の芽が出ます。順次間引きして1本立てにします。追肥は1週間置きに1000倍の液肥を施します。水やりは朝方にし、夕方に土の表面が乾く程度にします。根が直径5~6cmになったら抜き取り収穫します。収穫が遅れると肌が粗くなり、肉質も堅くなります。
 真紅の根を輪切りにすると、断面は同心円状に彩られています。生のままサラダにすることもできます。
 皮をむいて二~四つに切ってからゆでると、ゆで汁が鮮紅色になります。スープや酢漬けなどにしますが、ゆで汁もダイコンやカブ、ミョウガなどの色付けにも利用できます。
 『カチューシャ』や『ともしび』などのロシア民謡を歌いながらボルシチを煮込めば、よりいっそうおいしくなると思います。




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