私の食育日記

おふくろの味とは

食育インストラクター●岡村麻純/JA広報通信より


 先日、私の友人が住むシンガポールへ遊びに行きました。4歳と1歳の子どもたちにとっては初めての海外です。そんな中一番不安だったことが子どもたちの食事です。友人によると、シンガポールの食事は特に癖もなく、日本人好みの物が多いとのこと。確かに、しょうゆで鶏肉を煮込んだ物や、焼きそばのような物など、日本食に似ていて食べやすい。それでも、子どもたちにとっては日本食とは違ったようで、あまり食べず、友人が自宅で作ってくれたおにぎりやパン、煮物などを食べていました。
 そもそも人がおいしいと感じる要因にはその食べ物の味やにおいの他に、その個人が経験してきた特性や食べるときの環境も含まれることが分かっています。つまり、初めての海外旅行で外国の方に囲まれて食べる緊張感や、初めて食べる料理だという先入観がおいしいと感じる力を弱めてしまっている可能性があります。
 しかしながら、日本のおにぎりや煮物を食べたがる子どもたちを見て、1歳の娘に関してはまだ離乳食を開始して1年ほどしかたっていないにもかかわらず、すでに食べ慣れている味、おふくろの味というものが確立しているのだなと感心しました。
 このおふくろの味。何となく懐かしい味、ほっとする味にこの言葉が使われます。これは、幼い時期に自分が守られ、安心して食事をしていたときに食べた味に対して感じるといわれています。母乳に含まれるうま味成分ではないかとの話もありますが、日本においては、離乳食を開始した頃、おかゆや野菜のペースト、そしてそれをおだしで溶いた物をあげるのが一般的です。なので、やはりおふくろの味の正体は、おだしなのではと思います。
 最終日にはかけうどんが食べたいと言いだした息子。毎日食べている昆布とかつおの混合だしがおふくろの味として身に付いているのだなと少しうれしくなりました。

食育とは何だろう 

食育インストラクター●岡村麻純/JA広報通信より


 大学の卒業論文のテーマは食育。食育について普通よりは勉強してきたはずの私ですが、母親になり、子どもたちの食事を毎日作っていると悩むことばかりです。硬いと言って息子がお肉を食べないとき、夫に「かむ力が足りないと体にも脳にも良くないぞ。もっと硬い物を食べさせないと」と注意されると、「そんなことは私がよく知っている!」とけんかになることもあります。厳しい夫に、「何より楽しく食事をすることが大切だよ」と諭すこともあります。そこでふと、そもそも食育とは何だろう、私は何を学んでほしいのだろうと考えることがあります。
 政府は、食育とは「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる力を育むことと記しています。健全な食生活とは、主に、栄養バランスの良い食事、リズムの整った食生活といえます。この生きる上で必要な基本的なことをわざわざ学ばなければならないのは、食べ物があふれる裕福な暮らしになったからです。生きていくのにぎりぎりの食べ物しか手に入らなければ、食べ物を選択することすらできません。食べ物がなければ、そもそも決まった回数食事をすることもできません。
 そんなふうに考えていたら、私が子どもたちに学んでほしいことはただ一つ。食べられるということへの感謝です。現在も世界には飢餓で亡くなる子どもたちがたくさんいます。それを思うと、お菓子ばかり食べて夕食を廃棄するなんてできるはずもありません。好き嫌いはしないでと言うのも、食事中に肘は突かないで、と怒るのも、全ては食を大切にする心を身に付けてほしいからです。この飽食時代の子どもたちに食べ物の大切さを伝えることはとても難しいことです。まずは大人が食への感謝を忘れなければ、「これ食べたくないからあれ買って」、そんな子どもの言葉につられそうになっても、踏みとどまることができるのではないでしょうか。そこから食育が始まります。

おうちで楽しくドレッシング作り

食育インストラクター●岡村麻純/JA広報通信より


 野菜好きのわが家の大人は、塩、こしょう、オリーブ油さえあればサラダは大満足。しかし、子どもは生野菜が苦手です。そこで、子どもにも生野菜を食べてもらいたいと、ドレッシング作りを始めました。
 ドレッシングは、お酢と油を混ぜ合わせ、とろりとした状態です。このお酢と油をベースに、とっても簡単にさまざまな味のドレッシングを作ることができます。おしょうゆとおだしで和風味にしたり、梅干しを加えたり、かんきつ類の果汁を入れてフルーツのドレッシングにしたり、ショウガやニンジン、タマネギをすりおろして加えたり、砂糖や蜂蜜で甘味を足したり、大人用には、ゆずごしょうやワサビ、七味、マスタードなどを加えてぴりっとさせてもおいしくなります。使うお酢も、米酢やリンゴ酢、ワインビネガー、黒酢など、油も、オリーブ油にごま油、米油などいろいろな組み合わせができます。作り方も簡単。材料を容器に加えてシャカシャカ混ぜるだけ。このシャカシャカを子どもたちにやってもらえば、自分で作ったという気持ちも生まれて、喜んで野菜に掛けてくれます。
 普段混ざり合わないお酢と油が混ざり合うことを乳化といいます。ドレッシングの場合は、しばらくするとまた水と油が分離してしまうので、食べる直前によく混ぜる必要があります。しかし、お酢と油を乳化させたマヨネーズは時間がたっても分離しません。これは、マヨネーズの中の卵黄が水と油が混ざり合うのを助ける役割をしているからです。マスタードにも同じように乳化を助ける力があります。マスタードを使い、油を最後に少しずつ加えて作る方法でクリームのようなドレッシングを作ることもできます。
 ドレッシングを手作りすれば毎日違う味が楽しめます。そして何より、一緒に作ることで子どもたちもサラダに興味を示してくれることがうれしいです。

おやつはやっぱり干し芋、干し柿

食育インストラクター●岡村麻純/JA広報通信より


 息子は幼稚園に入ってからさまざまなお菓子デビューをしました。その結果、おやつへの執着が強くなり、夕食をあまり食べなかったり好き嫌いをしたり、心配事が増えました。また、兄が食べていれば妹も同じものを欲しがります。しかし、1歳児にはまだ控えてもらいたい物もちらほら。そこで、家でのおやつの時間は干し芋や干し柿にすることに決めました。これならば、子どもも喜ぶ上に兄妹そろって楽しめます。
 日本の伝統の干し芋、干し柿。干し芋は江戸時代から、干し柿は平安時代からあるといわれ、干し芋はサツマイモを蒸した物を、干し柿は渋柿を干して作られます。では、干すことで栄養は変わるのでしょうか。
 干し芋も干し柿も、もともとは水分を多く含む野菜や果物です。その水分を干すことで2~3割にしています。水分がなくなると、水に溶けやすいビタミンCなどは減少してしまいますが、水に溶け出さない脂溶性のビタミンAやビタミンE、カリウム、食物繊維、鉄分などは、干して小さくなることで栄養も凝縮します。干し芋は、抗酸化作用があり生活習慣病や老化を防いでくれるビタミンEが豊富で、食物繊維の100g当たりの含有量は生のサツマイモの2倍近く、鉄分は3倍も多く含まれます。干し柿も、目や皮膚の粘膜を守るとされるビタミンAが生の柿の約3倍、食物繊維は9倍近く多く含まれます。
 干すことで甘味も凝縮されるので、おやつにぴったりです。また干した物の魅力の一つにかみ応えがあるという点もあります。現代はかむ力の弱い子どもが増えているといわれますが、おいしいおやつならば一生懸命かんでくれます。よくかんでくれるので、少しの量で満たされてくれるのも魅力です。干し芋、干し柿の他にも、無添加のドライフルーツにすることもあり、「かめばかむほどおいしい味が出るよ」と子どもたちはうれしそうに食べています。


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